セメントは、石灰質原料と粘土質原料を焼成してできるクリンカーと石膏を混合・粉砕してつくられます。そして、水と出会うと、「水和反応」という複雑な化学反応を起こします。この化学反応の結果、新たな微細粒子(ケイ酸カルシウム水和物など)が生まれ、セメント粒子の間を埋めていきます。
これがセメントの「硬化」です。
水が少ないほどコンクリートは密実になって、高強度、超高強度といった耐久性の優れたコンクリートをつくることができます。一方、コンクリートの「流動性」を上げて施工できるようにするためにも水が使われます。しかしこの場合、かなりの水を入れないと、流動性は出て来ません。
たとえば、小麦粉に水を入れた時に、かなりの水を入れないと水が消えてなくなるのと同じです。それはセメントや小麦粉のような細かい粉では、粉と粉が凝集していて、その空隙に水が吸われてしまうためです。結果、「水和反応」よりもはるかに多い水が必要になりますので、得られる強度には限界がありました。
水を加えた時に、セメント粒子のひとつひとつを分散させることができれば、水は空隙に吸われて消えることなく、すべて「流動性」に使うことができます。そして、それはコンクリートの強度を上げ、耐久性の改善につながります。
アクアロック®は、高分子型界面活性剤として、セメント粒子を「膜」で覆って、セメントの凝集を妨害する(分散作用)と同時に、セメント粒子が水になじむようにして(浸透作用)、水和反応を進みやすくする、という働きをします。
株式会社日本触媒 研究本部・枚田 健(ひらた つよし)上席研究員は、ポリカルボン酸系コンクリート混和剤用ポリマーの開発において、ハンス・キュール・メダルをドイツ化学会から受賞いたしました。この賞は、建設化学分野において極めて独創的なテクノロジーを発明、発展させ、世界の建設産業に著しい貢献を果たした個人に贈られるものです。
当該ポリマーは、当社にて商品名:アクアロック®として製造販売されており、その高い減水性能が認められ、明石海峡大橋や東京湾横断道路などの高強度、高信頼性が要求される建造物に使用されています。当社は1987年に事業化し、現在、日・米・中に計10.1万トンの生産能力を持っています。
ハンス・キュール・メダルは、セメント化学で著名なドイツのハンス・キュール(Hans Kuhl)教授(1879-1969)を記念して2003年から始まり、これまでドイツ国内外で7名が受賞しています。日本では、元・花王株式会社の服部健一氏がナフタレンスルホン酸系減水剤で2003年に同賞を受賞しています。
当社は、今後も独創的で優れた技術を開発・企業化し、グループ企業理念「TechnoAmenity 私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します」の実現にまい進してまいります。