R&D for the future

日本触媒は、保有する強みを活用し以下のような注目市場に向けた研究開発・価値提案を進めています。
社会的課題の解決、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラル実現を通じ、サステナブルな未来に向けた社会との協創に取り組んで参ります。

海水淡水化・廃水処理向け素材
浸透圧発生剤

  • SDGs 6:安全な水とトイレを世界中に
  • SDGs 9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • SDGs 12:つくる責任つかう責任
  • SDGs 14:海の豊かさを守ろう

浸透圧発生剤(DS:Draw Solute)は、次世代の海水淡水化技術である正浸透(FO:Forward Osmosis)システムの主要部材です。当社が開発したDSは、FOシステムの中で、高い浸透圧により海水から水を引き出し、その後、加熱により水と分離する性質を利用して、効率良く淡水を取り出すことができます。

この際に用いる熱源は、工場排熱や太陽熱を利用することで、逆浸透(RO:Reverse Osmosis)システムのような既存の海水淡水化技術よりも省エネ、 CO2排出量削減、低コスト化が可能となります。また、当社DSは繰り返し使用が可能であるため、環境負荷も小さくなります。さらに、FOシステムは、工業廃水処理(ZLD:Zero Liquid Discharge[無廃水化])の用途にも適用できるため、年々厳しさを増す世界的廃水規制に対応しうる技術としても注目されています。

加熱と冷却のイメージ
正浸透システムの模式図
正浸透システムの模式図

電池

全固体リチウム電池の高性能化に貢献する
室温で充放電可能なポリマー電解質の開発に成功

  • SDGs 7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • SDGs 13:気候変動に具体的な対策を

全固体リチウム電池の性能を飛躍的に高めるポリマー電解質膜の高性能化に成功しました。次世代電池として長寿命、高安全性などの特徴を持つ全固体電池ですが、ポリマー電解質を用いたリチウム電池はリチウムイオンの伝導性が乏しく、電池温度を50℃以上に加温する必要がありました。
当社は、独自開発のイオン伝導メカニズムを取り入れ、電解質膜中のリチウムイオンを伝搬しやすくしました。ポリエチレンオキシド系電解質膜との比較では、リチウムイオンの伝導率は5倍以上に向上し、室温での充放電が可能になりました。
従来の全固体リチウム電池と比較して、充電時間の短縮や、エネルギー密度の向上、電池を加温するための熱源を減らせるなど多くの改善効果を見込め、新しい用途展開が期待できます。

全固体リチウム電池の高性能化のイメージ図

健康医療

多様な可能性をもつ中分子医薬原薬の受託製造

  • SDGs 3:すべての人に健康と福祉を

私たちは中分子原薬の供給を通じ人々の健康と医療を支え、社会の未来に貢献していきます。

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インフラ・住宅

コンクリート構造物の長寿命化に貢献する高吸水性樹脂(SAP)

  • SDGs 11:住み続けられるまちづくりを
  • SDGs 12:つくる責任つかう責任
  • SDGs 13:気候変動に具体的な対策を

コンクリートは、古代ローマ時代から現代に至るまで、社会インフラを支える重要な土木・建築材料として使用されています。一方、コンクリートの主原料であるセメントは製造時に多くの温暖化ガス(CO2)を排出するため、構造物の施工から維持に係るCO2削減や循環型社会の実現に向けた対応が求められています。これまで、SAPを利用したコンクリートの長寿命化(高耐久化)に関する検討が進められてきましたが、紙おむつや産業用途で使用されるSAPでは急速に吸水してしまいコンクリートの流動性低下を招くことから、その利用や普及には至っていませんでした。
当社は、コア技術である高分子合成技術とセメント用添加剤の知見を活かし、コンクリートの施工中の吸水速度を制御したコンクリート向けSAPを開発しました。このSAPは、コンクリート内部での水の徐放性効果により、強度の向上、中性化防止、収縮量の低減等を発現するため、コンクリート構造物の長寿命化が期待できます。

コンクリート構造物の長寿命化に貢献する高吸水性樹脂(SAP)のイメージ図

ディスプレイ

ディスプレーなどのハードコート剤に適用できるシリカナノ粒子分散剤を開発

  • SDGs 9:産業と技術革新の基盤をつくろう

当社製品のシリカ微粒子「シーホスター」で粒径100ナノメートル以下の新グレード「IX-3-NP」シリーズを開発しました。次世代ディスプレーや半導体などの電子情報材料の高機能化に伴い、ナノサイズレベルにまで微小化した材料が求められるなか、当社は独自の合成技術と触媒で培った無機酸化物のノウハウにより、ナノ粒子の最適な生産条件を確立しています。
シリカナノ粒子は真球状のアモルファスシリカ微粒子で、粒径は10~100ナノメートルの範囲で自由に制御ができ、粒度分布がシャープで高純度であることが特徴です。加えて、高度な表面処理技術により多様な溶剤への分散が良好で、かつ顧客組成物に適した表面設計が可能です。
高い透過率を維持しつつ、硬度や耐擦傷性を向上させることができ、光学フィルム向けの透明ハードコート剤だけでなく、半導体周辺材料向けナノフィラー、歯科材料など各種材料の硬度付与材としても応用が見込まれています。

シリカナノ粒子分散液の外観(20nm)の写真
シリカナノ粒子分散液の外観(20nm)
シリカナノ粒子分散液のTEM像(20nm)の写真
シリカナノ粒子分散液のTEM像(20nm)

化粧品

化学の力で美しさを引き出す化粧品原料

  • SDGs 9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • SDGs 14:海の豊かさを守ろう
  • SDGs 15:陸の豊かさも守ろう

私たちは快適で心地よい生活の実現に化学の力で貢献します。
「美学」を追求するあなたに理想を叶える力を贈りたい。

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環境浄化

焼却処理方法に代わる排水処理方法
高効率かつ低コストな処理能力をメンテナンスフリーな設備で実現

  • SDGs 6:安全な水とトイレを世界中に
  • SDGs 12:つくる責任つかう責任
  • SDGs 13:気候変動に具体的な対策を
  • SDGs 14:海の豊かさを守ろう

触媒湿式酸化排水処理(CWAO)は、排水中に含まれる有機物等の有害物質を高効率かつ低ランニングコストで処理できる技術です。当社が独自に開発した固体触媒を用い、空気を酸化剤とする液相酸化反応により、毒性の高い有機物、有機窒素化合物、アンモニア、硫黄化合物などを二酸化炭素、水、窒素、硫酸塩などに無害化できます。CWAOではSOx、NOx、ダイオキシンを含む排ガスや、燃焼灰などの二次汚染物質も発生せず、焼却法と比べて環境にやさしいクリーンな処理方法です。さらに、酸化分解反応で発生するエネルギーを再利用して熱的自立運転を行うことができるため、CO2排出量も削減できます。
また、後段に生物処理を組み合わせることで更に高度な処理を図ることが容易にできます。化学工場や半導体工場等から排出される排水、特に生物処理では浄化が困難な排水の処理に適しています。

触媒湿式酸化法  (CWAO: Catalytic Wet Air Oxidation)のイメージ図

パッケージング・プリンティング

UVインクジェット印刷向けの反応性希釈剤
VEEA®とAOMA®

  • SDGs 9:産業と技術革新の基盤をつくろう

VEEA®は、優れたUV硬化性と低粘度が特徴のアクリル酸系モノマーで、UVインクジェット印刷向けの反応性希釈剤に使用されています。特にQRコードなどのラベル印刷に適しており、環境規制でUV化が進む欧米を中心に需要が拡大しています。
一方、機能性モノマーAOMA®もUV / EB硬化材料の希釈剤として優れた低粘度特性を示します。
またそのポリマーは、従来では両立が困難とされた「硬さ・耐熱性」と「柔軟性・強靭性」を併せ持つ材料として、UV硬化型3Dプリンタで作る造形物に強靭性、耐熱性の付与が可能となりました。
今後はフレキシブルデバイス用コーティング剤、異種の素材を接合する接着剤等、さまざまな用途への適用が期待できます。

3Dプリンタの写真
3Dプリンタ

グリーンイノベーション

バイオマス原料から作るアクリル酸・高吸水性樹脂

  • SDGs 9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • SDGs 12:つくる責任つかう責任
  • SDGs 13:気候変動に具体的な対策を

アクリル酸は、紙おむつの吸水成分である高吸水性樹脂や塗料・粘接着剤の主剤や添加剤であるアクリル酸エステルなどの原料として、幅広く使われています。しかし、紙おむつなどの最終製品は使用後に廃棄・焼却されると、二酸化炭素(CO2)の排出源となります。
そこで、日本触媒では、石油由来プロピレンからバイオ由来プロピレンへの代替検討や、バイオマス原料からのアクリル酸新製法の開発を進めています。バイオマスは空気中のCO2が光合成により吸収・固定されたものであるため、焼却時に排出されるCO2はカーボンニュートラルと見なすことができ、 CO2排出削減につながります。
バイオマス原料から作るバイオアクリル酸は、2022-2024年度の中期経営計画期間中に量産技術開発に目途をつけ、2030年までのなるべく早い時期での商業生産を目指します。
高吸水性樹脂やアクリル酸エステルへも展開を図りお客様の最終製品を含めたライフサイクル全体でのCO2排出削減に貢献することを目指していきます。

カーボンニュートラルのイメージ図

水素

グリーン水素の普及促進やCO2排出量削減に貢献する
アルカリ水電解用セパレータ

  • SDGs 7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • SDGs 9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • SDGs 13:気候変動に具体的な対策を

アルカリ水電解用セパレータはグリーン水素※1の製法として注目を集める「アルカリ水電解」※2に使用するセパレータです。水素エネルギーは使用時にCO2を排出しないため、車載用や家庭用などの燃料電池として利用が広まっています。
同セパレータは水素製造効率に大きく寄与する素材で、水の電気分解効率が高いこと(低い膜抵抗)、生成した水素と酸素を透過しないこと(高ガスバリア性)の2点の性能が要求されます。高温・高濃度のアルカリ水という過酷な条件下で耐久性のある実用的なセパレータは限られていましたが、当社独自の有機無機複合技術とシート成形技術により、これらの性能を両立する製品開発に成功しました。
消費電力の抑制や、生成水素の純度向上などのメリットが期待でき、グリーン水素の普及促進やCO2排出量削減に貢献していきます。

  • ※1再生可能エネルギーを利用してCO2排出を抑制した製法で作られた水素
  • ※2水酸化カリウムなどの強アルカリ溶液を用いて水電解を行う方法
アルカリ水電解の模式図とアルカリ水電解用セパレータの画像

半導体・通信

高熱伝導性材料として5G通信の普及などに貢献する
ナノ炭素系新素材の酸化グラフェンを量産化

  • SDGs 7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • SDGs 9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • SDGs 13:気候変動に具体的な対策を

近年、注目されているナノ炭素系新素材として、独自技術を駆使した酸化グラフェンの開発に取り組んでおり、事業化を見据えた顧客への提案活動や量産化技術の確立を進めています。
酸化グラフェンは、厚さ約1ナノメートルのシート状になっており、原料の黒鉛を強力な酸化剤で酸化させながら炭素材料の層の間隔を広げ、剥離し、薄片化しています。水や一部の極性溶剤に均一に分散させられるため、フィルムにコーティングしたり、樹脂に練りこんだりしやすいなどの点が高く評価されています。
今後の用途としては、5G(第5世代通信)関連部品のほか、自動車部材、電池材料など、放熱性が求められる素材への採用を想定しています。

酸化グラフェンのAFM像の写真
酸化グラフェンのAFM像
酸化グラフェン分散体の外観の写真
酸化グラフェン分散体の外観

サーキュラーエコノミー

新たな価値「使い捨て」から「循環利用」への転換による廃棄物削減

  • SDGs 12:つくる責任つかう責任
  • SDGs 13:気候変動に具体的な対策を

紙おむつは、主に紙パルプ、プラスチック、高吸水性樹脂(SAP)で構成されています。使用済み紙おむつのリサイクルは、トータルケア・システム株式会社により、原料の一部で実用化されています。リサイクル処理後の再生パルプは建築資材の原料(外壁材、内装材など)として有効利用され、プラスチックは固形燃料としてサーマルリサイクルされています。
日本触媒は、まだ実用化されていないSAPのリサイクル技術について検討を開始し、大人用紙おむつメーカー大手の株式会社リブドゥコーポレーションとトータルケア・システムとの3社共同で、新規リサイクル技術の開発に成功しました。この技術は、①尿を吸収して大きく膨らんだSAPに処理を施して紙パルプとの分離性を高め、紙パルプの回収率を向上させる技術、②SAPの性能低下を最小限に抑えつつ回収ができ、かつリサイクル時の省エネルギー化や河川などの水質保全にも配慮した技術の2点です。
これらの技術は、当社が生産する全てのSAPはもちろん、他社のさまざまなSAPにも適用できる技術です。今後はこの技術を実用レベルまで高めていくとともに、リサイクルしやすい素材と処理技術の開発を進め、3社共同によるリサイクルシステムの構築に取り組んでいきます。

使用済み紙おむつからの再資源化の図

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