革新的潜熱蓄熱マイクロカプセル(h-MEPCM)の量産技術開発事業がNEDOに採択 ~日本触媒、北海道大学、東洋アルミニウムによる共同研究体制で社会実装を加速~

  • 研究開発

 株式会社日本触媒(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:野田和宏、以下「日本触媒」)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」において、「革新的潜熱蓄熱マイクロカプセル(MEPCM)・成型体の量産技術開発」事業(以下「本事業」)が採択されたことをお知らせいたします。
 本事業は、2021年度にNEDOの「エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」にて実施された「合金系潜熱蓄熱マイクロカプセル(h-MEPCM※1)を基盤とした高速かつ高密度な蓄熱技術の研究開発」の成果を基盤とした、実用化フェーズの技術開発です。
 本事業では、北海道大学大学院工学研究院附属エネルギー・マテリアル融合領域研究センターの能村貴宏教授(以下「北海道大学」)、東洋アルミニウム株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:楠本薫、以下「東洋アルミニウム」)との共同研究体制を構築。東洋アルミニウムが得意とする合金製造技術を活用して量産されるアルミニウム合金を原料に、北海道大学が開発したh-MEPCMを日本触媒の触媒成型技術により成型体化・量産化し、用途に応じた蓄熱成型体として社会に広く提供することを目指します。

蓄熱技術の社会的背景と期待
 地球温暖化対策として、再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進が進められています。しかし、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは天候に左右されるため、安定した電力供給には蓄エネルギー技術の活用が不可欠です。
 畜エネルギーの方法としては、電気を蓄える電池が一般的ですが、コストや寿命の面で課題があり、普及の妨げとなっています。一方、熱としてエネルギーを蓄える「蓄熱」は比較的安価な手段として注目されており、近年では電気を熱に変えて蓄え、必要なときに再び発電する「カルノーバッテリー」技術も社会実装に向け、技術開発が行われています。
 また、熱エネルギーは国内産業部門のエネルギー消費量の約6割を占めており、非常に幅広い分野で利用されています※2。しかし、熱が発生する時間や場所と、実際に必要とされる時間と場所が一致しないことが多く、現在は多量の余剰熱が捨てられているのが現状です。蓄熱技術を活用することで、このような需給のズレを解消し、余剰熱を再利用することで大幅な省エネルギーが可能になります。

h-MEPCMの技術的特長と社会実装への取り組み
 北海道大学の能村教授が開発したh-MEPCMは、約600℃で融解する金属核を、融点2,000℃以上のアルミナで封じ込めた粒径約30ミクロンの蓄熱粒子です。金属核の融解時に潜熱として大量の熱を蓄えることができ、従来の顕熱蓄熱※3材に比べて高い蓄熱密度を実現します。
 従来の潜熱蓄熱※4材では、液体と固体の相変化に伴う取り扱いの難しさや、相ごとの熱伝導率の違いによる設備設計の複雑さが課題でした。h-MEPCMは、アルミナの殻により外観を固体のまま維持できるため、潜熱蓄熱材でありながら従来から使用されている岩石やアルミナボールといった固体蓄熱材と同等のハンドリング性を有し、用途に適合する成型体に加工することが可能です。さらに、金属の高い熱伝導率により、内部の熱を効率的に外部へ伝達でき、安定した温度維持と高出力での熱放出が可能です。
 これらの特長からh-MEPCM成型体は高温排熱の回収、工業プロセスの熱管理、再生可能エネルギーの蓄熱など、幅広い分野での応用が期待されます。具体的には鉄鋼業界で使用される電炉排熱の再利用や、高温産業炉の省エネ技術であるリジェネバーナー※5での利用、コジェネレーション※6の熱電需給調整、EVの暖房用蓄熱等の省エネ用途、また蓄熱技術と組み合わせた種々の再生可能エネルギーの安定利用に向けた幅広い展開を想定しています。
本事業では三者一体となってそれぞれの強みを最大限に活かすことで、MEPCMの実用化に即した蓄熱成型体の量産技術の確立とコスト低減を実現し、社会実装を加速してまいります。

※1:h-MEPCM:Microencapsulated phase change materials(潜熱蓄熱マイクロカプセル)。h-は北海道大学。
※2:出典:「産業分野の熱プロセスにおける脱炭素化に向けた検討」エネルギー・資源, Vol. 44, No.5, p294, 2023
※3:潜熱蓄熱:物質が相変化(固体⇔液体など)する際に吸収・放出する熱を蓄える方法。
※4:顕熱蓄熱:温度の変化によって熱を蓄える方法(物質の温度が上がることで熱が蓄えられる)。
※5:リジェネバーナー:高温炉の排ガスの熱を蓄熱体に回収して、吸気ガスの余熱に用いる方法。30%以上の省エネ効果があると言われている。
※6:コジェネレーション:電気と熱を同時に供給する方法で、蓄熱を行う事により、各々を必要とする時間帯のずれを埋めてエネルギーを有効利用できる。

・関連リリース

2021.01.12
地球温暖化抑制に貢献する、高速かつ高密度な蓄熱デバイスの開発を推進 - 日本触媒・北海道大学・産総研で共同研究 - | ニュース | 日本触媒

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