トップメッセージ
TechnoAmenityの実現
変化が激しく先行きが不透明な時代と言われていますが、私が社長に就任した2022年6月以降もインフレの進行や地政学的リスクの高まり、急激な円安などさまざまな変化が起こっています。そのような状況においても、サステナビリティや温暖化対策に対する人々の意識や関心はますます高まっていると感じています。
日本触媒はグループ企業理念として「TechnoAmenity ~私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します」を掲げています。私たちは、人々が快適に安心して暮らすことができる社会、すなわち持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
私たちには地球環境を守っていく使命があります。そして、人々が地球環境を守りたいと心から願っている今の時代にこそ、当社の強みである技術が役立つと考えています。将来のカーボンニュートラルや水素社会の実現には化学の力が必要です。私たちは今こそ力を発揮し、持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えています。
新たな戦略を追加して長期ビジョン達成を目指す
日本触媒グループは、「2030年の目指す姿」を定めた長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」の下、2022~2024年度の中期経営計画「TechnoAmenity for the future–Ⅰ」を策定し、今年がその最終年度となります。
中期経営計画では、「事業の変革」「環境対応への変革」「組織の変革」に取り組んでいます。「環境対応への変革」と「組織の変革」については順調に進捗していますが、「事業の変革」における目標の2024年度中の達成は厳しい状況です。
このような状況から次期中計を待たず、今年度から経営戦略と財務戦略を見直すことにしました。経営戦略においては、将来の成長が見込める事業領域を選定し、リソースを集中させることとしました。また、財務戦略については資本効率の向上を目指し、新たな目標や方針を設定しました。
経営戦略
―成長事業へのリソース集中により「事業の変革」を加速する
ソリューションズ事業では、将来の成長が見込めるエネルギー、エレクトロニクス、ライフサイエンスの3つの事業領域にリソースを集中させていきます。エネルギー分野では、EVの普及に合わせて、リチウムイオン電池用電解質(イオネル®)のグローバル展開を図るとともに、水素の製造・輸送・利用を支える製品群の開発を進めます。エレクトロニクス分野では、次世代の光学材料や半導体向けの高付加価値製品群を投入していきます。ライフサイエンス分野では、オリゴ核酸やペプチドの中分子原薬の受託製造事業を展開します。その他の分野でも、環境に貢献する製品として需要の伸びが期待できるスペシャリティ製品やコンストラクション関連製品などに積極的に投資を行い、事業の拡大を加速させていきます。
また、マテリアルズ事業では、化学産業再編の動きの中で、アクリル酸や吸水性樹脂、酸化エチレンなどの各製品の戦略を見直し、キャッシュを生み続けるコア事業として収益力を強化していきます。将来の脱炭素・低炭素への動きを捉え、持続可能な事業形態への変革を目指します。
財務戦略 ―資産・資本効率の向上
資産効率・資本効率を向上させるため、これまでの財務戦略を見直し、新たな方針と目標を設定しました。具体的には、レバレッジの水準の最適化を図るため、2027年度末をめどに株主資本比率を60%近傍にまで引き下げる目標を定めました。そのため、2024年度からの4年間は配当性向100%(あるいは株主資本配当率2%のいずれか大きい金額)の配当を実施します。また、政策保有株式を4年間で50%縮減すると同時に自己株式の取得を進めます。そして、ROICによる事業管理を行い、各事業部門の収益性と資本効率性の向上を図っていきます。
環境貢献製品を通じて社会課題を解決する ―環境対応への変革
省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入などにより、2023年度の温室効果ガス(GHG)排出量は2014年度比15%の削減を達成しました。また、マスバランス方式によるバイオアクリル酸および吸水性樹脂の生産を開始しました。
2030年度GHG 削減目標(2014年度比30%削減)達成のため、生産時のGHG 発生量を抑える触媒性能の向上に加え、再生可能エネルギーの利用拡大やバイオマス原料への転換を進めていきます。日本触媒が保有する触媒技術などを活用し、環境に貢献する事業や製品を通じて、社会課題の解決に取り組んでいきます。
多様な人財の活躍により持続的成長を図る ―組織の変革
企業が持続的に成長し進化するためには、さまざまなスキルや視点を持った人財が必要です。当社では各人の成長と能力を最大限に引き出すため、eラーニングなどの教育メニューの拡充やエンゲージメントサーベイに基づく現場ごとの改善活動などを行うとともに、キャリア採用の人数を増やし、組織の多様性を促進しています。
不確実性の高い環境では、これまでの延長上で考えていては進化を遂げることはできません。長期視点での人財の育成に加え、グループ企業理念に共感する多様な人財の力を結集して、会社を変革していきたいと考えています。
企業価値の向上に向けて
当社は今後、成長事業や社会課題を解決する製品群に積極的に投資を行っていきます。現在取り組んでいる「3つの変革」に新たな経営戦略と財務戦略を加え、それらの施策をスピーディーに実行することによって、企業価値を向上させてまいります。そして、化学の力で持続可能な社会の実現に貢献してまいります。