トップメッセージ

Q: まず、目指すものについて教えてください。
A: 私が社長として目指すのは、当社グループの企業理念である「TechnoAmenity ~私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します」の実現と企業価値の向上です。それは、私たちが事業を通じてさまざまな価値を提供し、人々が安心して快適に暮らせる社会の実現に貢献すること、そしてこの企業理念を基に会社が持続的に成長していくことです。それが、当社の存在意義であり、目指す姿だと考えています。
一方で、昨今、地政学的リスクの顕在化だけでなく、生成AIの普及など、事業環境が大きく変わってきています。これまでと同じやり方を続けるだけでは、もう通用しません。何を守り、何を変えるのか。その判断を先送りせず、自ら実行していくことが重要だと考えています。
Q: 2025年度をどのように振り返っていますか。また、今の経営課題をどう見ていますか。
A: 2025年度は、アジアを中心とする市況の低迷など厳しい事業環境が続き、業績は対前年減益となりましたが、その一方で、ソリューションズ事業はエレクトロニクスやエネルギー領域を中心に着実に成長しました。
現在の経営課題は、どのような事業環境にあっても、収益をあげられる強靭な企業体質に変革することです。昨今の中東情勢の緊迫化により、事業環境の不確実性が大きく高まっていますが、そうした中で当社グループは、安定供給を最優先にしながら価格是正を行うとともに、ソリューションズ製品を伸ばしてきました。その成果として、2026年度の業績については対前年増収増益を見込んでいます。引き続き、安定供給と収益確保に努めるとともに、ソリューションズ事業を中心とした成長投資を着実に進めていきます。
一方で、ROEが株主資本コストを下回っていることについては、経営として重く受け止めており、事業ポートフォリオの変革と資本効率の改善を、自ら先頭に立ってやり切ることがトップの責務だと考えています。株主還元や政策保有株式の削減ももちろん重要ですが、本質的には、しっかりと収益を生み出せる事業ポートフォリオに変えていくこと、「稼げる構造」をつくることが、持続的な企業価値向上につながると考えています。
業績と資本効率の推移
| 2024年度 実績 | 2025年度 実績 | 2026年度 予想 | 2027年度 目標 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益(億円) | 4,093 | 3,999 | 4,550 | ー |
| 営業利益(億円) | 191 | 175 | 210 | 350 |
| 利益率(%) | 4.7 | 4.4 | 4.6 | ー |
| ROE(%) | 4.5 | 4.3 | 5.2 | 7以上 |
Q: 事業ポートフォリオの変革と資本効率の改善の現在地を教えてください。
A: 単に成長事業に投資するのではなく、資本効率の観点から事業のあり方を変えていくことが「変革」につながります。現在は、収益性や市場環境などを見極めながら、事業ごとの位置付けや資源配分を見直し、必要な施策を実行しつつある段階にあります。
現時点で大規模な拠点や設備の再編を一律に進めているわけではありませんが、今後の成長性や資本効率の観点から、どの領域に経営資源を集中すべきか、またどの領域を見直すべきかについて、より踏み込んだ議論を進めています。今後、必要に応じて縮小や撤退といった選択肢も含めて検討していくことになるでしょう。
資本効率の改善に向けては、財務戦略の面でも取り組みを進めています。株主還元については、配当性向に加え、DOE(株主資本配当率)を基準として採用することで、安定した配当を維持する方針です。また、資本構成についても見直しを進めており、レバレッジ水準の最適化を図りながら、株主資本比率の適正化に取り組んでいます。
政策保有株式については、2027年度までに一定規模の削減を進める方針としており、資本の有効活用という観点から継続的に見直しを行っています。こうした取り組みを通じて、資本コストを意識した経営への転換を着実に進めていきます。
事業運営の面では、ROIC(投下資本利益率)の考え方を取り入れながら、各事業の収益性や将来性を総合的に評価し、経営資源の配分に反映させています。当社の場合、一律の基準で機械的に判断するのではなく、事業特性や市場環境も踏まえながらレビューを行っていますが、資本を投下する以上、その事業がどれだけ価値を生み出しているかを厳しく見ています。
そして、こうした資本効率の改善に向けた取り組みを実行しながら、事業ポートフォリオの変革を進めています。中計では、利益に占めるソリューションズ事業の比率を27年度に50%以上まで高めることを目指していますが、25年度実績で約3割だった比率が、26年度には4割強まで上がると予想しています。現在、まだ途上ではありますが、これらの取り組みを通じて、企業価値をさらに向上させていきます。
Q: 成長事業領域について、どのような手応えがありますか。
A: これまでお伝えしているとおり、現在、エネルギー(電池)、エレクトロニクス、スペシャリティ、コンストラクションの4つの成長事業領域に注力しています。
特に電池分野については、EVに加え、再生可能エネルギーの電力需給の安定化を背景に定置型蓄電池需要が広がっています。さらに、AIデータセンター向けの電力需要増なども含めて、電池の役割は今後ますます大きくなる見通しです。これらは、当社のリチウムイオン電池用電解質「イオネル®」の需要拡大が期待される分野であり、将来の需要を想定して、現在、イオネル®の生産能力増強を進めています。中国合弁会社における増設が先行していますが、国内の北九州においても新工場の建設を始めています。短期的には市場環境の変動もあり得ますが、自動車の電動化や蓄電需要の拡大という大きな流れは変わらないと見ています。重要なのは、特定の国や地域に偏ることなく、製品の地域分散や用途の多様化を進めながら、成長機会を着実に捉えることです。
また、エレクトロニクス分野では、ディスプレイや半導体向けの用途拡大を背景に、高機能材料の需要が広がっています。特に、半導体分野は先ほどの電池分野と似た背景があり、AI関連やEV、再生可能エネルギー用途などで当社製品に対するニーズの拡大が見込まれます。実際に半導体分野では、微粒子などの需要が伸びており、シーホスター®などを中心に積極的に販売を伸ばしていく方針です。ディスプレイ分野でも、光学材料用アクリル樹脂「アクリビュア®」の新グレードの採用が進んでおり、今後の成長が期待できると考えています。
加えて、2025年度の進捗という点では、次世代事業領域として位置付けている健康・医療にも手応えを感じています。CDMO(受託開発製造)を視野に、少量の開発受託案件数が大きく拡大しており、昨年度には1,000件程度まで伸長しました。海外顧客からの引き合いも増えており、いよいよ事業として立ち上がるフェーズに入ってきたと認識しています。今後は海外展開も見据えながら、まずは国内での生産能力を拡大し、事業基盤をしっかりと整えていきます。
成長事業領域として取り組んでいる各事業は、当社の中長期的な成長につながる基盤になると同時に、社会の持続可能性や環境対応を支える重要な領域です。これらの事業を拡大させながら、社会課題の解決と企業価値向上を両立していきます。
セグメント別利益とソリューションズ事業比率の推移

Q: マテリアルズ事業のグローバル戦略の一環として、インドネシアでの投資を決定しました。その狙いを教えてください。
A: マテリアルズ事業は、引き続き当社の重要な収益基盤です。特に高吸水性樹脂(SAP)については、グローバルサウス市場(インドネシア・インド・アフリカなど)における人口増加や所得上昇を背景に、今後も需要の拡大が見込まれます。日本では人口減少により、国内需要の縮小が予想される中、当社はインドネシアで生産能力を拡大し、成長市場の需要を取り込んでいく計画です。そして今回のインドネシア増設は、世界に5拠点あるSAPの生産最適化を進めるための取り組みとしても位置付けています。
Q: 中期経営計画2027におけるサステナビリティ戦略において、人財戦略、デジタル活用戦略、GX戦略を重要テーマとして掲げていました。
そのなかで、多様な物事の見方や、働く環境への言及がありましたが、進展をお聞かせください。
A: 各変革を実現するために重要となるのは、「人財」と「人財の可能性を広げる技術」だと考えています。不確実性の高い事業環境の中では、人財戦略とデジタル活用が鍵となります。人財戦略としては、多様な専門性やバックグラウンドを持つ人財を採用し、各部門が横断的に協働する仕組みづくりを進めています。また、デジタル技術活用では、AIやデータ解析技術の高度化により、研究開発や製造プロセスの在り方が大きく変わりつつあります。
特に生成AIについては、大きな可能性を感じています。私はこれを単なる効率化ツールとは考えていません。多様な視点を引き出し、可能性を広げるためのツールとして活用していくことが重要だと思っています。そのためには、それを使いこなす人財の育成や、情報の確からしさを見極めるリテラシーが不可欠です。人が考えることをやめるのではなく、人の思考を深め、広げる方向で活かしていくことが大切だと考えています。
また、多様な人財が活躍できる環境づくりも欠かせません。仕事と育児の両立支援や柔軟な働き方に関する取り組みが評価され、2025年12月には「プラチナくるみん認定」を取得しました。多様な視点があることが、変化の時代における競争力やイノベーションにつながります。
Q: 環境対応の変革についてはいかがでしょうか。
A: 気候変動への対応という観点では、国内でも排出量取引制度GX-ETSの導入が進むなど、制度面の整備が着実に進んでいると感じています。これに伴い、企業としても排出コストを含めた形で経営判断を行っていくことが、これまで以上に重要になると思われます。
また、再生可能エネルギーの位置付けは、単に環境対応というだけでなく、経済安全保障の観点からも見直されてきています。こうした中で、AIを含めた社会インフラを支える再生可能エネルギー分野の拡大は、当社の電池関連事業とも深く関わるテーマになってきました。
気候変動はリスクであると同時に事業機会でもあり、その影響は一段と高まってきています。今後は、各国・各地域の規制動向を踏まえ、投資判断や事業戦略の中にそうした変化を織り込みながら、グループ全体での取り組みを加速していきます。
Q: ガバナンスの強化については、どのように考えていますか。
A: 変革を進める中で、経営の意思決定に多様な視点が入っていることは非常に重要です。その意味で、ガバナンスの強化は、事業変革や企業価値向上を支える力になります。
当社の指名・報酬委員会の構成は3名から5名に拡充され、これまで以上に多様な意見を反映できる体制となりました。また、新たな役員も加わり、さまざまな視点からの意見を取り入れながら、監督機能を一層高めていければと考えています。
Q: 最後に、ステークホルダーへのメッセージをお願いします。
A: 不確実な時代だからこそ、守るのではなく、スピード感をもって変革を進めていきます。成長が見込める領域に積極的に経営資源を投入して事業を変革する、この取り組みをあきらめずに実行し続けることが、当社の目指す将来像につながると考えています。
企業理念「TechnoAmenity ~私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します」は、これからも当社の軸であり続けるものです。社会のためになる価値を提供していくという考え方は、事業の中身が変わっても、変わらないものだと思います。
この理念を守りながら、会社を成長させ、企業価値を高めていきます。そして当社グループを、これまで以上に皆様に期待される会社にしていきたいと考えています。