N-フェニルマレイミド(イミレックス®-P) N-フェニルマレイミド
基本情報
| 構造式 |  ![]()  | 
|---|---|
| 化学式 | C10H7NO2 | 
| CAS No. | 941-69-5 | 
| 分子量 | 173.16 | 
| 荷姿 | 20kg紙袋、800kgコンテナバック | 
N-フェニルマレイミド(イミレックス®-P)は、日本触媒が世界で初めて独自の製造技術で企業化した反応性に富んだ化合物です。ラジカル重合性、イオン重合性、感光性、殺菌性などユニークな特長があり、幅広い応用が期待できます。
代表的性状
| 項目 | 単位 | 代表値 | 
|---|---|---|
| 外観 | ― | 黄色固体 | 
| 融点 | ℃ | 88~90 | 
| 沸点 | ℃ | 135(0.48kPa) | 
| 溶解性 | ― | 一般に有機溶媒に良く溶け、特にアセトン、DMF、酢酸エステル、 ベンゼン等に高い溶解性を示します。 6.イミレックス®-Pの溶解度をご参照ください。  | 
製品規格
| 項目 | 単位 | 規格値 | 
|---|---|---|
| 外観 | ― | 黄色フレーク状固体 | 
| 融点 | ℃ | 89以上 | 
| 水分 | 重量% | 0.1以下 | 
共重合性
イミレックス®-P(M1)と各種モノマー(M2)との共重合におけるモノマー反応性比
| M2 | r1 | r2 | r1×r2 | 
|---|---|---|---|
| スチレン | 0.047 | 0.012 | 0.0006 | 
| 塩化ビニル | 1.260 | 0.062 | 0.08 | 
| メタクリル酸メチル | 0.183 | 1.022 | 0.19 | 
荷姿
20kgペーパーバッグ又は800kgコンテナバッグ
適用法令
インベントリ登録状況
| 国 | 法規 | 登録状況 | 
|---|---|---|
| アメリカ | TSCA | 〇 | 
| カナダ | NDSL | 〇 | 
| オーストラリア | AIIC | 〇 | 
| 欧州 | EINECS | 〇 | 
| REACH | 〇** | |
| 韓国 | KECL | 〇 | 
| K-Reach | 〇* | |
| 台湾 | TCSI | 〇 | 
| 中国 | IECSC | 〇 | 
| フィリピン | PICCS | 〇 | 
イミレックス®-Pの溶解度(溶媒100gに溶解する量(25℃))
| 溶媒 | 溶解度(g) | 溶媒 | 溶解度(g) | 溶媒 | 溶解度(g) | 
|---|---|---|---|---|---|
| アクリロニトリル | 100 | 酢酸エチル | 29 | o-キシレン | 14 | 
| DMF | 51 | ベンゼン | 28 | メタノール | 9 | 
| アセトン | 48 | スチレン | 21 | エタノール | 5 | 
| THF | 44 | トルエン | 18 | 水 | 0.11 | 
| MEK | 39 | 酢酸ブチル | 18 | 
用途例
耐熱性樹脂、塗料、接着剤、医農薬中間体、殺菌剤、防カビ剤、水中生物忌避剤、ゴムの加硫性改質剤、 感光性樹脂、絶縁ワニス
機能詳細
各種樹脂の改質
イミレックス®-Pはラジカル重合性で単独重合や他のビニル単量体との共重合が容易です。 イミド変性することにより得られたポリマーは、耐熱性耐薬品性等が改良され優れた特性を発揮します。
樹脂改質の応用例
| 樹脂 | 改質目的 | 用途 | 
|---|---|---|
| スチレン系樹脂 (ABS, ACS, AES, AAS等)  | 耐熱性、熱安定性の向上 | 自動車部品、弱電機器 | 
| PVC | PVC-ABS配合物の耐熱性向上 | テレビ、OA機器などのハウジング | 
| PMMA | アクリル樹脂の耐熱性の向上 | 光ディスク基板、光ファイバー、 照明機器部品  | 
| ポリマーアロイ | PA、PC、PBTの改質 | 自動車部品、家電部品、OA機器 | 
| αオレフィン (無水マレイン酸・N-フェニルマレイミド共重合体)  | 水溶性ホットメルト接着剤、 ハネムーン接着剤  | |
| フェノール樹脂 | 耐熱性の向上 | プリント基板の耐熱性接着剤 | 
イミレックス®-Pとα-メチルスチレンによるABS樹脂改質の比較
| フェニルマレイミド系ABS樹脂 | α-メチルスチレン系ABS樹脂 | |
|---|---|---|
| 耐熱性向上用モノマー | イミレックス®-P | α-メチルスチレン | 
| 共重合速度 | 速い | 遅い | 
| ⊿HDT/wt%-モノマー添加量 | 1.5~2.5℃ | ~0.5℃ | 
| HDT上限 | 150℃も可能 | ~115℃ | 
| 熱分解温度 | 高い | 低い | 
| メルトフロー性 | 高い | 低い | 
フェニルマレイミド系ABS樹脂とα-メチルスチレン系ABS樹脂の同一耐熱性での物性比較
| 物性 | 単位 | フェニルマレイミド系ABS樹脂 | α-メチルスチレン系ABS樹脂 | 
|---|---|---|---|
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 105 | 105 | 
| アイゾット衝撃強度 (1/2″、ノッチ付)  | kg・cm/cm | 18 | 12 | 
| メルトフローレート (220℃/10kg荷重)  | g/10min | 10 | 6 | 
| 引っ張り降伏強さ | kg/cm2 | 455 | 440 | 
| 曲げ強さ | kg/cm2 | 760 | 720 | 
スチレンとの共重合例
| 反応器への仕込み組成 | メチルエチルケトン | 25.6重量部 | 
| スチレン | 6.5重量部 | |
| t-ブチルパーオキシオクテート | 0.4重量部 | |
| n-ドデシルメルカプタン | 0.4重量部 | |
| 滴下槽への仕込み組成 | メチルエチルケトン | 23.6重量部 | 
| イミレックス®-P | 7.8重量部 | |
| スチレン | 35.7重量部 | |
| 重合温度: | 85℃ | |
| 滴下時間: | 5時間 | |
| 雰囲気: | 窒素置換 | 
反応終了後、多量のメタノール中にポリマー溶液を投入し、共重合体を分離し、真空乾燥する。
共重合物の性状
組成:スチレン/N-フェニルマレイミド=70/30モル比(元素分析)
分子量:Mw=10×104(G.P.C.,ポリスチレン換算)
Mn=5×104(G.P.C.,ポリスチレン換算)
ガラス転移温度:165℃(DSC)
PVCの改質
PVCの脆さ、特に低温における耐衝撃性が低いという欠点を改良するために、ABSと溶融混練するという方法がありますが、軟化温度が低いという問題があります。
イミレックス®-Pを添加することにより軟化温度を効果的に改善できます。
安全性
※詳しくは化学品安全データシート(SDS)をご参照ください
毒性
| 皮膚への影響 | 軽度ないし、やや中程度の刺激性があります。 | 
| 皮膚に付着したままで放置しますと炎症を起こします。 | |
| 眼粘膜への影響 | 中程度の刺激性があります。 | 
| 経口毒性(LD50) | 128mg/kg(ラット、雄)、148mg/kg(ラット、雌) | 
| 変異原性 | 認められません。 | 
取り扱い上の注意事項
イミレックス®-Pは人体に対して刺激性があり、吸入すると鼻腔、咽喉を刺激し、咳、くしゃみが出ます。取り扱いの際にはSDSをご参照の上、皮膚への接触を避けるようにして下さい。
保護具として有機ガス用防毒マスク、密閉性の良い保護眼鏡、ゴム手袋、長袖衣服等を必要に応じ着用してください。作業終了後はイミレックス®-Pの付着した衣服は着替えてください。
イミレックス®-Pのご購入に当たり、取り扱い上の注意事項について不明の点がございましたら、お問い合わせください。
応急処置
皮膚に付着した場合、汚染した衣服はすみやかに脱ぎ捨て、触れた部位を多量の水および石鹸で洗い流し てください。目に入った場合、清浄な水で15分以上洗眼した後、直ちに眼科医の手当てを受けてください。
貯蔵上の注意
直射日光および湿気を避け40℃以下の倉庫内の保管してください
お取り扱いの際には必ず化学品安全データシート(SDS)をご参照ください。
