浸透圧発生剤(DS)

FOシステムとは?

多量の電力を消費せずに、高品質な水が得られるシステム

近年、世界で水不足が深刻化しており、農業用水や飲料用水向けの海水淡水化や工場の水処理には蒸発法や逆浸透(Reverse osmosis、以下「RO」)システムが広く用いられています。ROシステムは海水や排水に対してRO膜を隔てて高圧をかけることでNaClなどの塩分や不純物を除去する技術であり、高品質な水が得られる一方で、高圧をかけるためのポンプが多量の電力を消費することが課題です。
この課題を解決する方法として正浸透(FO)システムが注目されています。FOシステムはFO膜を隔てて低塩濃度水溶液から高塩濃度水溶液へ溶液中の水が自然に移動する浸透圧の力を利用したものです。海水淡水化では、FO膜を隔てて海水の反対側に浸透圧発生剤(DS)を投入して海水より高濃度の水溶液を作り、海水中の水のみがFO膜を通してDS側に移動します。こうして、濃縮海水とDS水溶液(DSと水が混ざり合った溶液)ができますが、日本触媒で開発しているDSは、加熱することで水と分離するため、水を取り出すことができます。分離したDSはシステム内で再利用されます(システムフロー参照)。FOシステムは中東のような水需要の大きい地域での海水淡水化や、排水ゼロ排出(ZLD:Zero Liquid Discharge)のための濃縮技術としても導入が検討されています。日本触媒では今後のFOシステムの拡大を見据え、DSの更なる性能向上、高機能化に努めています。

DSの特徴

基幹部材のDSの高機能化により造水量を30%向上

FOシステムの本格的な普及には造水量の向上が求められており、その実現には基幹部材のDSの高機能化が重要な鍵となります。日本触媒はアクリル酸や酸化エチレン、エチレンイミンなどから合成する水溶性ポリマーを長年製造しており、それらの技術を応用することで、DSの高機能化に取り組みました。モノマーを選定し、構造を最適化して、高浸透圧および優れた分相性を付与する事により、従来品よりも造水量を30%向上可能なDSの開発に成功しました。その優れた分層性として、加熱することにより写真のように水とDSが2層に分離し、水を取り出すことができます。

当社開発の浸透圧発生剤(撮影のため、DS溶液を色素で着色)

システムフロー

一般的なFOシステムのフロー図になります。
例えば海水淡水化では、FO膜を隔てて海水の反対側に浸透圧発生剤(DS)を投入して海水より高濃度の水溶液を作り、海水中の水のみがFO膜を通してDS側に移動します。
こうして、濃縮海水(排水)とDS水溶液(DSと水が混ざり合った溶液)ができますが、日本触媒で開発しているDSは、加熱することで水と分離するため、真水を取り出すことができます。
分離したDSはシステム内で再利用されます。
FOシステムは中東のような水需要の大きい地域での海水淡水化や、排水ゼロ排出(ZLD:Zero Liquid Discharge)のための濃縮技術としても導入が検討されています。日本触媒では今後のFOシステムの拡大を見据え、DSの更なる性能向上、高機能化に努めています。

よくある質問

人体・環境への毒性が低い化合物で、危険物質は含有されていません。用途に応じた認証を取得予定です。

常温で200~1000 mPa・sです。

わずかな臭気があります。

80℃以上を想定していますが、用途に応じて調節可能です。

分相後の水相に含まれるDSは微量で、その浸透圧は通常のROシステムで処理される処理水よりも低いため、通常のROシステムよりも低いエネルギーで済みます。

品番が限定されますが、ご提供可能です。

現在、小型評価装置の販売に向けて、検討を進めているところです。

石炭火力発電所、石炭化学プラント、繊維染色工場、ゴミ浸出水処理場、電気メッキ、鉱山等をターゲットとして想定しております。