徹底解説!洗浄剤設計の基本と応用

衣類、食器などの家庭用洗浄剤から産業用洗浄剤まで。幅広い分野に活用できる洗浄剤設計のポイントを基礎から解説!

洗浄剤設計の基礎知識

洗浄剤(洗剤)は、洗濯用途、台所用途、住宅・家具クリーナー用途などの家庭用洗浄剤や、飲食店などで用いられる業務用洗浄剤、工場ラインや生産設備などの特定環境で用いられる産業用洗浄剤などがあります。

使用されるシーンや、洗浄物の材質や表面状態を理解し、汚れの性質(有機物、無機物、複合物など)を把握し、化学・物理作用を組み合わせた洗浄メカニズムを整理して、環境・安全性、使用条件に合わせた設計を進めることが必要になります。

洗浄剤に配合される成分の種類と役割

① 界面活性剤

界面活性剤は、汚れを落とす主要な役割を担い、洗浄剤の主剤として使用されることが多い成分です。汚れの種類や基材の材質、泡の制御、安定性、使用条件、安全性・環境を考慮し、「アニオン」「カチオン」「ノニオン(非イオン)」「両性」などの界面活性剤から適切な種類や組み合わせを選定します。

ノニオン界面活性剤であるソフタノール®(セカンダリーアルコールエトキシレート)は、泡立ちが少ない低泡性番手を含むラインアップを持ち、家庭用洗浄剤から産業用洗浄剤まで幅広い用途で使用されています。

② 洗浄助剤(ビルダー)

洗浄助剤(ビルダー)は、洗浄剤に欠かせない添加剤で、洗浄剤の主成分である界面活性剤の効果を補助し、洗浄性能や製品の安定性を向上させる成分の総称です。主成分である界面活性剤の設計に加えて、この洗浄助剤の選定も洗浄剤設計のキーとなります。

分散剤
  • 汚れや粒子を水中に均一に分散させ、再付着を防ぐ役割があります。
  • 衣類用洗浄剤の場合には、衣類の黒ずみを防ぎます。
  • 無機粒子(スケール、錆粉、研磨剤など)の除去および安定化ができます。
  • アルカリ洗浄における炭酸カルシウムなどのスケール付着を防ぎます。
アルカリ剤 
  • 洗浄剤のpHを上げ、汚れを効率的に分解する役割を果たします。
  • 酸性の汚れやスケールを中和して除去します。 
  • アルミなどの金属表面の金属酸化物や軽度の腐食生成物を溶解・除去し、表面を清浄化します。
  • エタノールアミンの配合で、洗浄液がアルカリ性になると油脂汚れの分解や石鹸化反応が促進されます。
キレート剤(水軟化剤)
  • 水中や汚れに含まれる、カルシウム、マグネシウム、鉄などの金属イオンを錯体として捕捉し、界面活性剤と金属イオンが反応して洗浄機能を阻害しないようにします。
  • キレート剤の中には、ポリマー型のキレート剤があり、次亜塩素酸ナトリウムへの配合が可能な品番もあります。
  • タンパク質や脂肪酸金属塩(石鹸カス)など、カルシウムなどの金属がバインダーとなっている汚れの除去にも効果的です。
キレート剤がカルシウムイオンを引き抜くことでタンパク汚れの除去が促進される

日本触媒の洗浄剤・洗浄助剤と機能一覧
ソフタノール®アクアリック®KL-001アクアリック®FN-001アクアリック®Lポリエチレンイミンエトキシレート(PN-100)生分解性キレート剤 HIDS®
分散効果
キレート効果
液体洗剤
配合適性※
アニオン界面活性剤ブースト

※液体洗剤配合適性:分離や、白濁などを起こさずに、幅広い配合に対して高い配合安定性を示すこと

洗浄剤や洗浄助剤のお困りごとや、選定に関するご相談はこちらから当社に問い合わせください。

③ その他の添加剤

界面活性剤や洗浄助剤(ビルダー)の他にも、洗浄剤設計の上で重要な働きをする成分(その他の添加剤)があります。ここではよく使われる添加剤について記載します。

安定化剤
  • 安定化剤には、変色防止剤(酸化防止剤)、防腐剤、相溶化剤、可溶化剤などがあり、目的や洗浄剤の特性に合わせて選定されます。
  • 相溶化剤は、洗浄剤内の異なる成分(例えば油性成分と水性成分)の相性を改善し、分離を防いで製品全体の安定性を保ちます。
  • 可溶化剤は、水に溶けにくい成分(香料、油など)を分散させ、水溶液中に均一に溶け込ませます。
液性調整剤(pH調整剤)
  • 洗浄剤全体のpHを適切な範囲に保つことで洗浄効果を最適化し、洗浄対象へのダメージを抑える役割を持ちます
  • 洗浄剤の用途によって、酸性からアルカリ性まで幅広い範囲で調整されます。
増粘剤
  • 洗浄剤の粘度を調整し、製品の使用感や使いやすさを向上させるために配合されます。
  • 液体洗剤などでは、適度な粘度を持たせることで垂れにくくし、汚れに密着させる効果があり、製品の安定性を高め、成分が均一に分散した状態を保つ役割も果たします。
  • 水溶性の増粘剤として、ポリアクリル酸やポリアクリル酸ナトリウムなどが使用されます。
酵素
  • 特定の汚れを分解することで、汚れを除去しやすくします。

洗浄剤で汚れが落ちるメカニズム

汚れの種類として、油溶性の汚れとしては、皮脂や各種油が、水溶性の汚れとしては、食品の汚れや塩分・糖分、汗などが挙げられます。汚れの多くは油溶性と水溶性の汚れが混ざった混合汚れであることが多く、汚れの特性に合わせた洗浄剤設計が求められます。ここでは、汚れが落ちるメカニズムを説明します。

STEP
吸着

洗浄剤中の界面活性剤の疎水基が、洗浄対象に付着した汚れに吸着します。この際に、カルシウムやマグネシウムイオンなどがあると、界面活性剤の種類によっては、界面活性剤が失活しますが、キレート剤や洗浄助剤(ビルダー)を洗浄剤に配合しておくと、失活を防ぐことができます。

汚れに対して、十分な量の界面活性剤が存在すると、界面活性剤の疎水基が洗浄対象と汚れを覆うことができます。

STEP
乳化

水の中で汚れが、界面活性剤に取り囲まれて、洗浄対象から分離する形で引きはがされます。親水基(-の部分)が水となじみ乳化作用が働きます。

STEP
分散・再付着防止

水中に汚れが散らばり、細かく分散されます。洗浄助剤(ビルダー)を適切に使用することで、汚れを微細な粒子として均一に分散する働きがあります。ポリアクリル酸ナトリウムなどの洗浄助剤(ビルダー)は汚れが洗浄対象に再付着するのを防ぎます。

課題解決事例で知る洗浄剤設計のポイント

① 洗浄剤の濃縮化事例

② 食器洗浄機用途の関連事例

食器洗浄機用洗剤に配合。分散能と可溶化能を持つ高相溶性多機能ポリマー

【キーワード】界面活性剤との高い相溶性 、スケール防止能 、再汚染防止能

業務用食器洗浄機用の洗剤で活躍!洗浄力と環境負荷低減を両立させるキレート剤

【キーワード】 EDTA代替、PRTR制度に非該当、ポリマー型キレート剤

③ 機械部品洗浄用途の関連事例

金属の油汚れ落ちへの効果と作業時間短縮が両立できる界面活性剤とは?

【キーワード】ノニオン界面活性剤、低発泡、金属の油汚れへの洗浄力

日本触媒の洗浄剤・洗浄助剤