空調運転時、高密度に冷熱を搬送できる材料を開発しました

2002年4月11日
大阪ガス株式会社
株式会社日本触媒

大阪ガス株式会社(社長:野村明雄)と株式会社日本触媒(社長:柳田浩)は共同で、大型ビル空調システムや地域冷暖房システム向けの新規な高密度冷熱搬送材を開発しました。今後、大阪ガス供給エリア内の大型ビル空調システムおよび地域冷暖房システムへの実用化のための検討を進めるとともに、(株)日本触媒、大阪ガス(株)及び大阪ガス関係会社から本材料の販売も計画しています。

現在、大型ビル空調システムや地域冷暖房システムでは、冷凍機で得た冷水を、配管を通じて室内に搬送し、室内機にて冷水と空気との間で熱交換させる手法が一般的です。一方、空調設備の更なるコストの低減が求められるなか、イニシャルコストに占める配管コストとランニングコストに占めるポンプ動力のコストダウンが大きな課題になっています。そこで、冷水よりも単位体積当たりの冷熱搬送密度が高い材料を用いて少ない循環量で同量の冷熱を搬送する試みが行われていますがポンプの剪断などにより劣化が早い、安定性に欠けるなどの問題があり、実用化には到っておりません。

そこで今回、大阪ガスと日本触媒は、日本触媒が保有するポリマー架橋技術を活用することにより、相変化物質を安定にゲル化することで冷水よりも単位体積当たりの冷熱搬送密度が高い新規な冷熱搬送材を開発しました。

この搬送材は、固体と液体の間を相変化する物質をゲル化させた微粒子を、水に分散させたスラリ状で使用します。これにより冷熱搬送に水の顕熱(温度差による熱)だけでなく、相変化物質の潜熱(固体から液体に、または液体から固体に相変化する時の熱)をも利用するため、単位体積当たりの冷熱搬送密度を向上しております。

その結果、以下のような効果が期待されます。

  1. (1) 水搬送システムと比較して、冷水ポンプ動力コストを削減できます。
    ゲル化微粒子を水に15重量%添加したスラリを用いると、従来の冷水による冷熱搬送と比較して、単位体積当たりの熱搬送密度が約1.2倍に増加するため、従来と同じ熱を搬送するのに必要な流量は従来の約80%に減少することができます。また流量が減少するため、圧力損失(流動抵抗)は従来の約60%に低減されます。その結果、ポンプ動力は従来の約50~60%に削減できます。
    *ポンプ動力は、一般に流量と圧力損失の積に比例する
  2. (2) 新築時及びリニューアル時のイニシャルコストが削減できます。
    単位体積当たりの熱搬送密度が増加するため、新築時の配管は従来より小さいサイズで設計でき、配管費用が低減されます。またリニューアル時に熱需要の増加に伴う配管のサイズアップの改修が不要となります。
  3. (3) 流動性に優れています。
    ゲル化微粒子は凝集せず、流動性が水と同等であるため、従来使用されているポンプや熱交換器がそのまま利用できます。
  4. (4) 安全で、耐久性に優れています
    現在、ポンプ動力削減の観点から導入が検討されている(一部導入済み)のエマルジョン方式とは異なり、安定性が良く、取り扱いが容易です。また、同様に導入が試行されているマイクロカプセル方式とは異なりゲル特有の弾性により、ポンプの剪断や配管壁との摩擦による劣化がほとんどありません。
  • ・顕熱(けんねつ)と潜熱(せんねつ):
    顕熱とは、物質の温度上昇(または下降)量とその物質の熱容量(単位重量当たり、1℃温度変化させるのに必要な熱量)の積で求められる熱に対し、潜熱とは、物質が、固体から液体または液体から固体に、或いは液体から気体または気体から液体に相(そう)が変化する際に必要な熱をいう。
  • ・ゲル:
    高分子等を含む溶液がゼリー状に固化したもの。なじみのある例として、寒天やゼラチン、豆腐、こんにゃく、等がある。構造は高分子の支持構造中に多量の液体成分が保持されているものである。今回の材料では、液体成分が相変化物質に相当する。
  • ・スラリ:
    液体中に微粒子が分散して懸濁液となったもの。

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