気候変動への対応
温室効果ガス(GHG)排出削減の推進
GHG排出削減ロードマップの策定
日本触媒は、2021年4月公表の日本触媒グループ長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」に基づき、「3つの変革」の一つである「環境対応への変革」について、2050年に向けたGHG排出削減ロードマップを策定しています。
2025年4月に公表した中期経営計画の策定に合わせ、マテリアリティを見直しました。GHG排出量削減(Scope1+2)については、海外グループ会社を含む日本触媒グループ目標を新たに設定しています。
2030年までは、プロセスの改善を含む省エネルギーの推進やグリーンエネルギーの利用推進によりエネルギー使用によるGHG排出量の削減を進め、原料の一部バイオマス化や触媒の効率向上などによりエネルギー使用以外のGHG排出量の削減を進めます。
2030年から2050年までは、2030年までの対策を引き続き進めるとともに、新たなグリーン燃料(水素、アンモニア)の利用促進により、エネルギー使用によるGHG排出量の削減を図ります。同時に、原料のバイオマス化の拡大に加えて、リサイクル原料の利用、カーボンリサイクル技術の活用(CO2回収・再利用)によりエネルギー使用以外のGHG排出量の削減を進めていく予定です。
2050年に向けたGHG排出削減ロードマップ

エネルギー使用量・CO2排出量の削減
当社は、(一社)日本化学工業協会が定めた低炭素社会実行計画の目標設定に鑑み、社長が委員長を務めるRC推進委員会で中期RC基本計画を策定しています。この計画を基に各事業所では省エネ活動やCO2排出削減を推進する委員会を中心に、気候変動を緩和する活動をしています。
2024年度実績は、省エネ活動を進め、エネルギー発生型製品の生産量が増加したことにより、エネルギー消費原単位は改善しました。また、カーボンオフセット都市ガス(旧カーボンニュートラル都市ガス)の継続利用とCO2排出原単位の改善により、CO2排出量は減少しました。2024年度の国内GHG排出量は701千トン-CO2e※1で2014年度比16.8%※1削減となりました。
当社では、2021年度より姫路製造所で太陽光発電(オンサイトPPA)を行っています。また、廃熱の回収やコージェネレーションシステムの導入などにより省エネ活動を推進するとともに、プロセスで発生したCO2の一部を回収して液化炭酸ガスとして販売することで、CO2排出量の削減を行っています。
なお、GHG排出量およびエネルギー使用量の算定については、第三者の検証を受検しています(GHG第三者検証報告書)。
※1 カーボンオフセット都市ガスの購入によるカーボンクレジット量58千トン-CO2(対2014年度比6.9%分)のオフセット分を含みます。
GHG排出量の推移(国内)

社員の声
蒸留塔の改造による省エネルギー化
私が所属する部署では、N-ビニルピロリドン(NVP)を製造しています。NVPの製造プロセスにおいて、中間体のN-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(HEP)を合成後、副生した水を蒸留塔で回収して前段の反応に再利用しますが、蒸留液には水以外の高沸点の不純物が多く含まれており、回収水の大部分を廃水として燃焼処理を行う必要がありました。このため燃焼処理に伴う燃料使用量の増加と、燃焼によるCO2の排出が問題でした。

松橋 拓真
廃水量を削減するには、蒸留液から不純物を減らさなければなりません。対策について調査を行ったところ、蒸留塔内の上部温度が想定される温度よりも高めに推移しており、適切な運転条件を維持できていないことに気が付きました。そこで、技術部と協力し、これまでの製造で蓄積したデータを元に蒸留塔内温度と蒸留液中の不純物量の関係についてコンピューターシミュレーションでの解析を行い、蒸留塔の不具合箇所を特定し、改善のための改造工事を実施するに至りました。
難しかったのはNVP生産の合間に蒸留塔の改造工事を行わなければならなかったことです。私は社内関連部署と連携し、工事計画の作成、生産計画の見直し、運転スケジュールの作成、および工事の立ち合いなど、全般にわたって担当しました。
改造後、不純物量が減った蒸留液は原料の水としてリサイクル使用されています。廃水の燃焼処理がなくなったことで、都市ガスの使用量が減少し、年間で67.9kL(原油換算)の省エネルギー化を達成しました。また、燃焼時に発生するCO2の排出量も年間134トン削減できました。
今回の改善活動を通じて、設備の設計や運転状態を見直すことの重要性を再認識しました。今後もプラントの無事故無災害での運転、安定稼働を目指しつつ、無理や無駄、ロスを見逃さず、最適なプラントの運転を追求していきたいと思います。
フロン類の排出抑制
フロン類の製造から廃棄に至るライフサイクル全体を対象とした「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」は、2015年4月より全面施行され、さらに2020年4月より対象機器を廃棄する際の規制が強化されました。
当社は「第一種特定製品の管理者」にあたり、法で決められた簡易点検、定期点検を計画通り実行しています。また、2024年度のフロン類算定漏えい量は姫路製造所144トン-CO2e、川崎製造所は2,684トン-CO2eとなり、当社全体では2,931トン-CO2eとなりました。今後、点検・整備の強化や、地球温暖化係数やオゾン層破壊係数の低い冷媒を使用した機器への置き換え、機器廃棄時の適切な処理を実行することなど、気候変動を緩和することにつながるフロン類漏えい量の削減に努めていきます。
2024年度フロン類の算定漏えい量
姫路製造所 | 川崎製造所 | その他 | 全体 |
---|---|---|---|
144 | 2,684 | 102 | 2,931 |
サプライチェーン全体でのGHG排出量削減の推進
Scope3 排出量の算定
Scope3とは、サプライチェーンでの企業活動に伴うGHG排出量をカテゴリ別に計算し、合算したものであり、GHGプロトコルではGHG排出量を以下のScope1、2、3の3つに区分しています。
- Scope1直接排出量:事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
- Scope2間接排出量:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出
- Scope3その他の間接排出量:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
当社は、今後もScope3排出量の算定を継続し、企業活動全体でのGHG排出量の削減の可能性についても検討していく予定です。
Scope3 排出量の推移(日本触媒単体)
No. | カテゴリ | 排出量 | ||
---|---|---|---|---|
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
1 | 購入した製品・サービス | 1,370 | 1,462 | 1,408 |
2 | 資本財 | 43 | 49 | 88 |
3 | Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 | 89 | 97 | 95 |
4 | 輸送、配送(上流) | 13 | 14 | 14 |
5 | 事業から出る廃棄物 | 5 | 5 | 4 |
6 | 出張 | 0.3 | 0.3 | 0.3 |
7 | 雇用者の通勤 | 0.9 | 0.9 | 0.9 |
12 | 販売した製品の廃棄 | 1,884 | 1,798 | 1,811 |
合 計 | 3,405 | 3,426 | 3,421 |
Scope3 排出量削減の取り組み
当社は、Scope3排出量削減に貢献するため、以下の項目についても強力に推進します。
- 環境貢献製品(利用段階などでCO2排出削減に貢献する製品)の開発、普及拡大
- CO2回収・再利用技術(カーボンリサイクル技術)の開発、普及
- マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルの開発、社会実装
インターナルカーボンプライシング(ICP)
低炭素・脱炭素経営を推進するため、2023年2月1日より、インターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入いたしました。
ICP制度を導入することで脱炭素に向けたグループの意識を高め、省エネルギー化の推進、CO2排出量削減に関する事業機会・リスク検討を活発にし、長期ビジョンに掲げた3つの変革の一つである「環境対応への変革」を加速してまいります。
社内炭素価格 | 10,000 円/t-CO2 (国内外市場価格を参考にしたシャドウプライス) |
運用方法 | CO2排出量の増減を社内炭素価格の適用により費用換算し、投資判断指標の一つとして運用 |
適用範囲 | 日本触媒グループ |
GHG Scope | Scope 1+2 |